SEA Program

日常会話そのものが勉強

英語英文学科3年 福田 藍子さん

英語圏で学ぶ

一番大きく、人でにぎわう街は18時には閑散としていて、交通手段は車かバス。電車は通っていない。少し街を外れれば、そこら中に羊の群れが広がる。そんな大自然に囲まれるタスマニアの空気は美味しく、そこで生活を送る人は温かい人ばかりであった。街全体の時間がゆっくりと流れているため、家で過ごす時間が日本に比べて十分にあり、休日には友達や親戚を招いてパーティをしたりして、家族や友達との時間を楽しんでいた。日本から来た私にも家族同様に接してくれて、滞在していた5週間、その温かいコミュニティにいれてもらった。「第二の家だと思っていいからね。」「僕らは君の第二のママとパパだよ。」などとも言ってくれ、日本を離れ、見ず知らずの宅にお邪魔するホームステイで緊張もしていたが、すぐに家族の一員として溶け込むことが出来た。

私のステイ先にはもう一人の留学生もおり、毎日行動を共にしていた。家族間でのルールなどは特になく、家にあるものを自由に使ってよいというスタイルであった。朝起きたら、ハウスメイトの子と共有のバスルームを順番に使い、早く準備できた方が朝食とランチの準備をする、これは私たちの中で次第に作りあがった暗黙のルールだ。食事の支度をしてもらった方は食器を洗うというのもまた、私たちの中では決まりだった。お互いの準備が整ったらバス停まで昨日の事や、今日の予定など他愛もないことを話ながら向かう。お互いに英語を勉強中であるために、時にはスムーズに伝わらないこともあったが、それをまた違う言葉で言い直しコミュニケーションを取ることも楽しみの一つであった。また、それはクラスメイトとの会話も同様で、母国語が英語でない者同士の会話のために、お互いに通じないこともあるのだが、どうにか相手に伝えようと言葉を選びなおして会話を試みる。とてもスムーズとは言えないが、それが伝わって会話が成り立った時の喜びは一入だ。同世代の友達であったので話題も日本の友達とも大きく変わらず、楽しく会話をすることができた。また学校にはたくさんの学生がいて、みんな積極的に話しかけてきてくれたので、授業がかぶらない子とも会話する機会はたくさんあった。放課後は家でホストファミリーも交えて、学校での出来事や、テレビ番組のこと、お互いの母国のことについてなど話題は様々で、いろいろな話をした。

英語圏で学ぶ

ホストファミリーはもちろん、学校での友達は長期で英語を学んでいる人が多く、語彙力も私なんかよりもよっぽどあった。机に座ってテキストを広げ、先生の元、英語を学ぶことはもちろん勉強になるのだが、自分たちの興味のあることや、その日にあった出来事など、なんでもないことを日常に話したり、メールをしたりして実践的に英語を使うことが、私の英語力向上を手助けてくれたと言っても過言ではないだろう。日本では、日常的に英会話を行うことは難しいが、このように会話の中で英語を学べるというのは語学研修での醍醐味ではないかと思う。また、私は日本では人見知りをして、どちらかといえば積極的に話しかけるタイプではないのだが、今回の滞在では積極的に話しかけるだとか、会話を続けようと試みた。内容はなんでもいい。今日の天気だとか、今自分が眠いだとか、お腹が空いているだとか、相手の服をほめるだとか…、あえて普段なら口にしないようなことも話してみると、そこから話題が広がる、ということを覚えたのだ。はじめは慣れないが、そこから会話が広がる楽しさを一度覚えると、無意識的に話しかけられるようになっていた。

今回、私は日本ででも学べる事以外を学びたいと臨んだ。英語の勉強は日本でも出来るし、本気になれば日本で学びながらにして英語を習得することだって不可能ではないだろう。しかし、タスマニアの空気はタスマニアでしか吸えないし、タスマニアに滞在している人とはそこでしか会えない。自分がそこでしかできないことを十分に吸収したいと思った。短い滞在ならば尚更で、海外での生活は刺激的で楽しく、あっという間に過ぎてしまう。その中で思い出だけしか残らないのはもったいない、そう思い、人見知りの性格を打破して、積極的にコミュニケーションをとり、つたない英語ではあったが、会話を楽しんだ。この5週間は本当に濃いもので、できることならば帰りたくないくらいであった。参加出来て本当に良かったと思う。たくさんの素敵な出会いに感謝したい。