—スペイン語学留学通信— VOL.5

真実の瞬間を目撃して…

8月15日、同じサラマンカ市内にあるGuijueloという町へ友人と共に出かけた。闘牛を観戦する為だ。バスに揺られて40分程で、生ハムが名産であるその町へ到着した。日はまだ高く、とても暑い。すぐにチケットを買いに行き、日陰席を確保した。
6時半、ついに入場行進が始まった。馬車、そしてカポーテを持ったマタドール達、馬に乗り槍を持った3人のピカドール達が登場した。割り当てられる牛は1人当たり2頭、合計6頭だ。試合は2回に分かれている。1回目は体重が重い牛から、軽く俊敏な牛へ。2回目は逆になる。

この闘牛場での主役は馬に乗ったピカドール達である。その中でもトリを務めるピカドールはリーダー的存在で一番の花形だ。しかし、今回の闘牛で一番印象に残っているのは2回目、2人目のピカドールと闘牛との戦いだった。
その時の闘牛は特に狂暴であったように感じる。牛をその気にさせる為、まずはマタドールがカポーテを振り、牛が突進するように促すのだ。しかし、その牛はカポーテではなく、初めからマタドールめがけて突進してきたのだ。すぐに、マタドールは闘牛場の角にある避難所に隠れたが、牛は攻撃を止めなかった。

そこでようやくピカドールが登場した。馬に乗ったピカドールが牛の体力を消耗させる為に首元をめがけて長い槍を打った。しかし、牛の興奮は止まらない。もう1本打とうとしたとき、いきなり牛が向きを変えて馬を追いかけだしたのだ。すぐにピカドールはパニック状態になった馬をいさめ、奥へと引き返した。ピカドールが戻ってくるその間にも、牛の体力を消耗させる為にマタドール達がカポーテを振り、牛を走らせる。牛から流れる赤色の血とカポーテのピンク色はいまでも目に焼き付いている。

別の馬に乗ったピカドールが再び登場した。時には牛を追いかけ、時には逆に追いかけられる。そして再び馬を変えて登場するのだ。彼が刺す槍の長さ除々に短くなっていき、槍のデザインはカラフルになっていく。馬に乗ったピカドールが先に花がついた最も短い槍を刺したとき、牛の動きが止まった。それを見たピカドールは馬から降りた。牛にはもう自ら立ち向かう気力は残っていないように見えたが、ピカドールが赤いムレータをさっと降ると、牛は力を振り絞り2,3回立ち向かっていき、その場にへたり込んだ。ピカドールは様子を伺いつつ、最後に持っていた短刀でとどめをさした。牛が息絶えた瞬間だった。
死んだ牛の開いたままの瞳の黒さは深かった。会場から歓声と拍手が湧いた。牛から耳と尻尾を切り取り、円形の闘牛場をピカドールが回りながら、耳と尻尾をファンに投げ渡すのだ。一通り回り終えると、牛の亡骸を馬車にくくりつけ、引きずっていく。観客は牛に対して尊敬と感謝を込め、白いハンカチや持参した白い座布団を振りながら、牛を見送り冥福を祈るのだ。私も試合に対する興奮と、牛の死に対する悲しみが一緒になったなんとも言えない自分の気持ちを抑えつつ、白いハンカチを振ったのだった。(A.K.)

旅に出るなら

サラマンカには鉄道 (RENFE) の駅もありますが、やはり庶民の足は中・長距離バスでしょう。サラマンカの中心から15分ほどのところに大きなバスターミナル(写真)があります。サラマンカからマドリードまではおよそ2時間半、バリャドリードまでは約1時間半で行くことができます。遠くはラ・コルーニャやビーゴなど北へ向かう便やセビーリャやマラガなど南に向かう夜行便などもあり、いちいちマドリードまで出て乗り換えなくていいので非常に便利です。車体も大きく安定していて快適ですし、比較的時間にも正確。旅行者には強い味方です。

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